元空軍准将、元国防総省、
そしてホワイトハウスで働いた著者が気づいた、
アメリカの没落した姿

 

By:ロバート・スポルディング

1998年に、「ステルス爆撃機」として知られるB-2スピリットの操縦訓練を受け、そこから20年。

対中国戦略担当主任、国防総省の上級職員、中国駐在武官を経て、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)戦略計画担当上級部長の職を退いた時、私はアメリカに向けられた別の種類のステルス兵器の存在に深く憂慮するようになっていた。

この40年間、中国共産党は見事なゲームを繰り広げてきた。周到に練られたシンプルなゲームだ。そのゲームとは、世界規模での覇権と影響力を手に入れる為の競争、そして軍事的手段を使うことなく、その目的を達成しようということだった。

レーダーをかいくぐって静かに飛行する中国共産党は、開発費用を少しも負担することなく必要な技術を手に入れ、慎重な計画に基づき世界の輸送ビジネスを支配し、アメリカの企業や科学研究所に浸透した。

そして、アメリカの投資家の資金を使って自国の工場や企業にかかるコストを浮かせたかと思えば、あろうことか、いったん中国に入った資金は国外に持ち出してはならないと主張している。

21世紀の国家間の戦争は、19世紀や20世紀の戦争とはまったく別のものに見える。爆弾や銃弾の代わりに、使われるのは0と1のデジタルデータ、そしてドルとセントだ。


経済、金融、データ情報、製造、インフラ、通信といった現代世界の前線を掌握すれば、一発の銃弾も放たずに戦争に勝利できる。まさしくシンプルで論理的な戦略だ。そしてこれは、西側諸国のリーダーがなかなか理解できずにきた戦略でもある。

アメリカの政治、軍事、企業、財政のリーダーたちは、中共が続けてきた狡猾なゲームに気づけなかった。もっともなことながら、アメリカのエリートは、戦争とは爆弾と銃弾で戦うものだという、今となっては時代遅れの考え方で行動してきた。

しかし、中共の戦略は多彩な戦術を駆使した別の戦い方を取り入れている。窃盗、強要、経済的妨害行為、グローバルレベルでのインフラの独占をつねに重視し、そうした活動を奨励し、資金も提供する。

 

すべて、中国の勢力が及ぶ範囲を隅々まで拡大することが目的なのだ。私は中国のステルス戦争とその戦略について、世界に警鐘を鳴らしたい。

中国はそれらの戦略を使って
経済、軍事、政治外交、テクノロジー、教育、
インフラの6つの領域で世界を支配しようとしている。

事実・・・

全米経済研究所が発表した2016年の研究報告書「チャイナショック」によると、1990年から2007年まで、中国からの安価な輸入品との競争にさらされた地域ほど、製造業の雇用の大幅な減少を経験し、労働参加率の低下、賃金低下といった現象が生じた。こうした地域においては、失業給付や障害給付といった社会保障給付が著しく増加。より最近の研究によれば、中国との輸入競争によるアメリカの職の喪失は、1999〜2011年の期間に200〜240万人に及ぶと推定されている。[※1]

 

事実・・・

中国は一種のメディア戦争に力を入れている。外国の投資家に中国への投資は安全だと思わせる為に、官報(国の広報紙)に見せかけた折り込み広告を買い、「ワシントンポスト」紙のような権威ある新聞に挟み込む。また、中国のグローバルテレビジョンネットワークは、中国がアフリカで行なっている森林伐採について批判的な世界中のジャーナリストに新たな職を提供し、彼らの発言を抑えようとしてきた。イギリスの「ガーディアン」紙によれば、2倍の報酬を支払うというようなオファーもあった。

 

事実・・・

とあるアメリカの化学薬品会社は、画期的な環境保全技術の特許を取り、着実に成長していた。株式新規公開に向けて5年計画を練っていた。しかし突然、その会社は収益目標に届かなくなった。そして、ある中国企業から買収の提案があった。業績データも公開していないのに不審に思って調査に出すと、なんと中国のハッカーたちに妨害工作をされ、注文機能が正常に機能されておらず、そのせいで収益が下がっていることが分かった。[※2]またハッカーたちによるスパイ被害は日本でも受けている。

 

事実・・・

中国は数百万の国民をハッカーやインターネット監視要員として雇っている。2008年には、政府が数万の中国人に一件につき5毛(約7円)の報酬で、中共の政策を支持する。[※3]投稿を書かせている事実が、多くの報道で明らかになっている、この報酬額から「五毛党」と呼ばれている。2013年までにその数はさらに膨れ上がり、中国の公式メディアは共産党のプロパガンダ部門として200万人の”世論アナリスト”を雇い入れたと報じている。

 

事実・・・

民主党の下院議員で大統領候補でもあったある若手の議員は、中国人女性によるハニートラップに引っかかり、彼女はアメリカの機密情報を入手していたことが明らかになった。女性の正体は、中国の情報機関、国家安全部の工作員で、2011~15年に米西海岸を中心に米国各地で政治家や地方都市の首長らと交流を深め、親中世論をつくるための工作や情報収集を行っていたとされる。米フォックスニュースは、「中国人スパイの標的は、一部の政治家ではなく、(中国当局が)米政界にすでに深く浸透している」と警鐘を鳴らしている[※4]



[※1]参照元:Acemoglu et al., 2016
[※2]参照元:Robert Spalding.『Stealth War: How China Took Over While America's Elite Slept』(Portfolio)
[※3]参照元:Robert Spalding.『Stealth War: How China Took Over While America's Elite Slept』(Portfolio)
[※4]参照元:https://www.foxnews.com/politics/how-china-has-built-its-extensive-honey-trap-spy-network

 

 

本書の目的は、警鐘を鳴らすことだけではない。戦闘準備を呼びかけ、アメリカと自由世界が中国のステルス戦争とどう戦い、どう打ち破るかを詳しく説明していく。

したがって、この本を中国共産党の戦争の進め方を知る入門書と考えてほしい。中国が西側世界の支配に向けて突き進むのを止めるための項目別マニュアルでもあり、暗黒の未来への警告の書でもある。

 

私たちの経済、安全、制度、自由社会を守るために、断固とした行動をすぐに起こさなければ、アメリカがすでにそうなっているように、悪夢のような暗黒の社会へとなり下がってしまう。

それは、共産主義の国が私たちの生活と思考、誰と会い、何を話すかを監視する社会だ。その国が私たちの行動や思考や発言を気に入らなければ、何らかの抑圧的な行動を起こすだろう。

今お伝えしたのは、ほんの一部に過ぎません。中国が仕掛けるステルス戦争の手口を知れば、真実が見えてくる….

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